未熟者の哲学語り

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衛宮士郎の理想はどこが間違っているのか【Fate/stay night [UBW]】

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僕が会員登録しているHuluで『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』の配信がやってたので、リアルタイムで見てたのと合わせて二度目の視聴をした。

 

改めて見て思ったが、映像、構成、キャラクターどれをとっても一級品だった。

 

特に、士郎とアーチャー(未来の士郎)の間で行われる己の理想に関しての議論は、哲学肌の僕からするとなかなかに面白かった。

このモヤモヤはぜひ解決しないといけないなと思い、今この記事を書くに至っている。

 

果たして衛宮士郎の抱く「苦しむ人々全てを助ける」という理想はどこが間違っているのか。

順を追って考察していく。 

 

※当記事はアニメ版『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』の内容のみを取り上げて考察するものであり、原作と照らし合わせてその整合性を説くものではない。

 

 

 

衛宮士郎とアーチャーの違い

士郎の抱く理想が間違っているか否かを判断するには、まずそもそも士郎とアーチャーでは精神面にどんな差があるのか知る必要がある。

意外にも両者の間の差はそこまで大きくない。

 

衛宮士郎にあるもの

10年前の大災害、死にそうなところを切嗣から助けられたときの想いが強く鮮明に残っている。

反面、アーチャーはこの時感じた気持ちを忘れてしまっている。

 

アーチャーにあるもの

死ぬ前までと死んだ後の守護者としての士郎がこの先たどる人生全てを経験している。

衛宮士郎の理想が決して叶わないことを身をもって知っている。 

 

アーチャーから見た士郎の間違い

『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』では、アーチャーが士郎の理想を否定し、それに士郎が反抗していく形で物語が進んでいく。

よって必然的に、まずはアーチャー側の意見をまとめて、次に士郎側の反論をまとめるのが正しい流れだろう。

 

以下に、アーチャー(未来の士郎)から見た士郎の理想の間違いをまとめていく。

 

1.全員を助けるのは不可能

士郎が抱いている理想は「この世の人間"全て"を救う」こと。つまり、一人でも助けられない犠牲になる人間がいた時点で、理想の実現は終わってしまう。

「多数を助ける」という願望なら実現が可能だが、「全員を助ける」という願望は実現不可能である。

 

何となく実現できるのではないかと淡い希望を抱いている士郎に対して、未来を生きたアーチャーはその実現不可能さを真に理解している。

士郎はアーチャーから言われて難しことを理解しただけであり、理想の実現が不可能だと確信に到っている訳ではない。

 

2.守護者は掃除屋でしかない

Fateの世界に存在する"抑止力"という存在は、世界のバランスを保つために"守護者"を選定する。

守護者は霊長の世に害を与えるであろう人間を善悪に関係なく殺戮するだけの掃除屋である。

 

したがって、士郎が守護者になることはそもそも「人を助ける」という理想と反している

 

この問題は理想そのものに対する間違いの指摘ではなく、守護者という枠に入ることが間違っているというシステム的な問題である。

しかし、士郎がこの先も理想を曲げないのであれば、"たとえ間違っていたとしても"アーチャーと同じように死後は守護者になろうとするだろう。

 

3.理想が借り物でしかない

借り物の理想を信じて生きていくということは、例えば「本で読んだ偉人の名言を盲信して、それを守るためだけに生きる」ようなものだ。

その理想に至るまでの心情や体験は一切なく、ただ凄そうな他人の発言に従っているにすぎない。

 

参考にする程度ならともかく、人生の絶対に曲げられない基盤として据えるのは明らかにおかしい

 

他人の言葉に従っているだけだからこそ、士郎は自分の信念を修正することができない。

士郎が決して自分の理想を曲げないのも、理想が借り物であることに起因している。

 

また、"救った人(切嗣)"を見て正義の味方に憧れたわけであって、"救われた人(子ども士郎)"を見て憧れたわけではない

士郎は人を救う自分が好きなだけである。これを偽善と言わずに何と言う。

 

4.間違いを変えようとしない

物語の中盤の時点ですでに士郎は自らの持つ「正義の味方になる」という理想が間違っていることに気づいているが、それを決して諦めようとはしない。

この借り物の空想にすがる執着心こそが、アーチャーがここまで思い詰めてしまった原因の一つである。

 

アーチャーは士郎のこの頑固さを、「理想を貫き通す芯の強さ」というよりも「理想を柔軟に変えることができない愚かさ」と評価して嫌っている。

 

「人を助けたい」という想いだけが士郎の中にある唯一の感情なのだ。

間違っていると言われても、士郎に他の選択肢はない。

 

 

士郎からアーチャーへの反論

続いて、士郎目線からアーチャーへの反論をまとめていく。

 

先ほどのアーチャーからの

1.全員を助けるのは不可能

2.守護者は掃除屋でしかない

という二つの指摘は、未来の経験を積んでいない士郎ではどうにも反論することは難しいので割愛する。

 

主題は後半の

3.理想が借り物でしかない

4.間違いを変えようとしない

という二つの指摘である。

士郎はこれらの指摘に対して、しっかりとした意見を持って反論している。

 

3⏎.借り物と同時に本物でもある

アーチャーは士郎が人を助ける動機を他人への憧れ、つまり借り物の理想だと否定した。

しかし、大災害で助けられた記憶をまだ覚えている士郎からすると、「人を助けたい」という想いはただの憧れでなく純粋な"願い"という立派な感情である

 

士郎の理想はたしかに切嗣という他人の理想から連想されている。

しかし、それは何の脈絡もなく真似たという訳ではなく、士郎が切嗣の想いに完璧に共感できたからこそ模倣したのだ。

 

士郎にとって、「人を助ける」という理想は借り物などではなく、きちんと自分で選び取った理想である。

 

4⏎.人助けという理想自体に価値がある

士郎はアーチャーとの会話の中で、全ての人を助けたいという理想を実現することはできないと薄々悟っている。

仮に結果が伴わなかったとしても、「人助けという"美しい"理想を抱き続ける」ことにこそ価値があると思っている

 

この理想の"美しさ"にどれだけ価値を置くかは、大災害時の記憶があるかないかで大きく変わる。

すでに過去の気持ちを忘れてしまったアーチャーにとってはさほど価値はなく、"切嗣の残した呪い"とさえ発言している。

 

アーチャーと違い、士郎は美しい理想を抱き続けることに誇りを持っている。

「理想の正しさ」は問題ではなくいかに長い間「理想を曲げずに貫き通せるか」が問題な以上、生涯理想を貫き通したアーチャーの存在は士郎にとってプラスにすらなりうる。

 

 

【結論】士郎の間違いとは何か

『衛宮士郎の理想はどこが間違っているのか』というタイトルで記事を進めてきた訳だが、別にどちらかが間違っているということもない。

最後にアーチャーが自ら士郎に敗北したことから分かるように、二人の考えにはどちらも理がある。

 

結局のところ、両者の意見に食い違いが生じた理由はただ一つ。

10年前の大災害時、切嗣から助けられた時の気持ちを覚えているか否か。

これに尽きる。

 

覚えていないアーチャーは理想に価値を見出すことができない。

逆に、覚えている士郎は理想それだけに価値を見出すことができる。

 

これから士郎がアーチャーとは異なる後悔しない人生を歩んでいくのは、初心を忘れず「人助け」の素晴らしさを意識し続けられるかどうかにかかっている。

それさえ忘れなければ、仮に死ぬまで理想を実現できなくも少なくとも"後悔"はしないはずだ。

 

おまけ

最後におまけとして、士郎の固有結界への解釈を自分なりに考察してみる。

 

以下が24話での士郎の自身の魔術に関しての分析。

※ () の部分が個人的な考察。

俺にできることはただ一つ。自分の心を形にすることだけだった(唯一の感情である人助けの実現)。体は剣でできている。血は鉄。心はガラス。幾たびの戦場を超えて腐敗(生涯戦い続ける)。ただ一度の敗走もなく。ただ一度の勝利もなし(勝敗が目的ではない)。担い手はここに一人。剣の丘で鉄を打つ(誰にも理解されることがない)。ならば、我が生涯に意味はいらず(理想の正しさは問題でない)、この体は無限の剣でできていた(何度挫けようと諦めない)。そうだ、剣を作るんじゃない。俺は無限に剣を内包した世界を作る(自分を捨て理想の実現だけを追い求める)。それだけが衛宮史郎に許された魔術だった。

24話 士郎【士郎 vs ギルガメッシュ】

 

上の発言には士郎の理想に対する自己分析が全て詰め込まれている。

 

これほどまでに自分の性質が如実に魔術に現れている魔術師は少ないだろう。

人助けの感情しかない士郎らしさがよく出ている。

 

それにしてもFateの口上を文字に起こすと、ほんとにオサレ感が強い。

 

 

てところで、そろそろ記事を締める。

思ってたよりも長くなってしまったが、それなりな考察はできたんじゃないかと思う。

 

それでは。

 

 

 

 

 

 

個人的ベストショット【困惑してるセイバー】

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理想(僕への愛)を抱いて溺死(昇天)しろ。