未熟者の哲学語り

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【考察】カミュの『異邦人』 これぞ悟りを開いた男の生き様よ

どうも、ハイネスです。
 
先日、カミュの『異邦人』を読みました。

とまあ、先日と言っても、最初に『異邦人』を読んだのは一年ほど前になります。

 

当時は、軽く全体を読み流しただけで、そこまで深く読み込んでいませんでした。

 
という訳で、今回は改めて『異邦人』を考察していきたいと思います。
 
 

『異邦人』のあらすじ(ネタバレあり)

物語『異邦人』の主人公は、ムルソーという名の一人の青年です。
 
そして、『異邦人』では、常に主人公のムルソー視点でストーリーが進んでいきます。
 
ナレーションまでも含めて、物語の情報は全てムルソーを通して読者に伝えられます。
 
つまり、『異邦人』という物語は、ムルソーの持つ人生観や哲学ありきで成立しているという訳です。
 
そうしたムルソーの人となりを知るためにも、まずはあらすじを軽くおさらいしましょう。
 
『異邦人』あらすじ
 
『異邦人』は、第一部と第二部で構成されます。
 
【第一部】
(母親の死)
物語は、ムルソーの母親が急死するところから始まる。そして、これは後にムルソーを語る上でとても重要な出来事となる。
 
(アラビア人一団との諍い)
隣人のレエモンが知り合いの情婦と揉め事を起こしたことがきっかけとなり、ムルソーはアラビア人一団との諍いに巻き込まれることになる。そして、その諍いはムルソーがひとりのアラビア人を銃殺することで幕を閉じる。
 
【第二部】
(ムルソーの裁判)
ムルソーはアラビア人を銃殺した件で、裁判を受けることとなる。証人尋問では、恋人のマリイや友人のレエモンのどの多数が無実を訴えてくれた。しかし、ムルソーに下された判決は死刑。ムルソーは刑務所の中で、最後には自分の死を受け入れるのだった。
 
 

ムルソーの人物描写を作中からpick up

先ほどのあらすじでは、ムルソーの内面を全くと言っていいほど書けなかったので、今度は作中の文を引用しながらムルソーの人となりを考察してみたいと思います。
 
というか、もはやムルソー語録は見てるだけでも面白いので、とりあえず眺めていきましょう。
 
冷淡さ
きょう、ママンが死んだ。もしかすると、昨日かもしれないが、私にはわからない。
【第一部 1章 p6
 
今度は煙草をすいたいと思った。が、ママンの前でそんなことをしていいかどうかわからなかったので、躊躇した。考えて見ると、どうでもいいことだった。
【第一部 1章 p13
 
柩をしめさせようと思いますが。その前にお母さんにお別れをなさいますか」と私に尋ねた。いいえ、と私はいった。
【第一部 1章 p19】
 
(母親の)正確な年齢を知らなかった
【第一部 1章 p23】
 
ひげをそるあいだ、これから何をしようかと考え、泳ぎにゆくことに決めた。(母を埋葬した日の翌日)
【第一部 2章 p26】
 
日曜日もやれやれ終わった。ママンはもう埋められてしまった。また私は勤めにかえるだろう、結局、何も変わったことはなかったのだ、と私は考えた。
【第一部 2章 p32】
 
それは何の意味もないことだが、恐らく愛していないと思われるーーと私は答えた。
【第一部 4章 p46】
 
マリィが、ひどい、といったが、私は返事をしなかった。マリィが巡査を呼びに行ってと頼んだが、巡査はきらいなんだ、と私は答えた。
【第一部 4章 p47】
 
母を愛していたか、と彼は私に尋ねた。「そうです。世間のひとと同じように」と私は答えた。
【第二部 1章 p86】
 
私がママンの顔に黙禱もせずに、すぐさま立ち去った、といった。~。私がママンの年を知らなかった
【第二部 3章 p114】
 
真実何かを悔いるということが私にはかつてなかった~。私はいつでもこれから来たるべきものに、たとえば今日とか明日とかに、心を奪われていたのだ。
【第二部 4章 p128】
 
このとき以来、マリイの思い出はどうでもよくなった。死んだとしたらマリイは、もう私の興味をそそらなかった。私はそれが普通だと思った。
【第二部 5章 p146】 
改めて見ると、ムルソーは本当に冷淡ですね。
 
母親が死んでも、悲しむそぶりなんて一切ありませんからね。
 
彼にとっては、例えば、「死人に対して敬意を払う」というような行為は全く意味を持たないのでしょう。
 
 
無関心さ
自分の仲間になりたいかと、また私にきいた。どちらでも同じことだ
【第一部 2章 p38】
 
彼の仲間だろうと、そうでなかろうと、私にはどうでもいいことだった
【第一部 3章 p43】
 
実をいうとどちらでも私には同じことだ
【第一部 5章 p54】
 
学生だった頃は、そうした野心も大いに抱いたものだが、学業を放棄せねばならなくなったとき、そうしたものは、いっさい、実際無意味だということを、じきに悟ったのだ。
 【第一部 5章 p54】
 
私は、それはどっちでもいいことだが、マリイの方でそう望むのなら、結婚してもいいといった。~。前に一ぺんいったとおり、それには何の意味もないが、恐らく君を愛してはいないだろう、と答えた。~。そんなことは何の重要性もないのだが、君の方が望むのなら、一緒になっても構わないのだ、と説明した。すると結婚というのは重大な問題だ、と彼女は詰め寄ってきたから、私は、違う、と答えた。~。同じような結びつき方をした、別の女が、同じような申し込みをしてきたら、あなたは承諾するか、とだけきいてきた。「もちろんさ」と私は答えた。
【第一部 5章 p54】
 
その男はすこしして、私に怖気づいたか、と尋ねたが、私は、そんなことはない、と答えた。
【第二部 3章 p105】
 
私はたった一つ、これが早く終わり、そして独房へ帰って眠りたい、ということだけしか願わなかった。
【第二部 4章 p133】
 
裁判長が奇妙な言葉つきで、あなたはフランス人民の名において広場で斬首刑をうけるのだ、といった~。~。裁判長は何もいい足すことはないかと尋ねた。私は考えてみた。私は「ないです」といった。
【第二部 4章 p136】 
今回は別々に分けましたが、“無関心さ”は“冷淡さ”とかなり似ていますね。
 
ムルソーは、「仲間」「婚約」といった関係の変化を、全く意味のないものとして認識しているようです。
 
そして、最も驚くべきことに、死刑を宣告された時でさえ取り乱さずに冷静でいるのです。普通の反応は、泣きわめいて抗議するとか絶望に陥るとかだと思うのですが…。(私ならおそらく後者です。)
 
 
億劫さ
別に話したくもなかったから、私は「そうです」といった。
【第一部 1章 p7】
 
「御覧にならないですか」というから、「ええ」と私は答えた。
【第一部 1章 p10】
 
私はといえば、それ以上二人に説明するのが面倒になった。
【第一部 6章 p71】
 
面倒くさくなって、私はそれをあきらめてしまった。
【第二部 1章 p84】
 
いつもそうするのだが、よく話をきいてもいないひとから逃げだしたいと思うと、私は承認するふりをした。
【第二部 1章 p87】 
 
悔恨を感ずるよりもむしろ、うんざりしている、と答えた。
【第二部 1章 p89 】
 
ほんとに厭だなあと思った。
【第二部 3章 p111】
 
ほんのしばらくして、疲れたな、と感じた
【第二部 3章 p112】 
これもムルソーの特徴の一つなんですが、しきりに「面倒くさい」という発言をします。
 
常人が大事だと思うことでさえ無意味に感じてしまうムルソーだからこそ、大抵のことに興味が注がれず“面倒くさい”と思ってしまうのかもしれません。 
 
 
欲情
ふざけたような振りをして、頭をそらし、彼女の腹の上へ載せた。
【第一部 2章 p26】
 
夜、映画に行かないか、と私は尋ねた。
【第一部 2章 p27】
 
私はひどく欲望を感じた。
【第一部 4章 p44】
 
彼女が笑ったとき、私はふたたび欲望を感じた。
【第一部 4章 p46】
 
ほんのつまらぬことにも、彼女はまた笑い声を立てたので私は接吻してやった。
【第一部 4章 p46】
 
私はマリイに欲望を感じた。
【第一部 6章 p67】
 
私は、肉体的な要求がよく感情の邪魔をするたちだという、説明をした。
【第二部 1章 p83】
 
同時に、私はマリイを眺め、そのローブの上から肩を抱き締めたいと思った。この薄ものを欲情した。
【第二部 2章 p95】
 
私はしきりに、一人の女を、女たちを、また、私の知った女たちを、愛撫を与えたあらゆる機会のことを思い、ために私の独房は、女たちの顔に満ち、私の欲情で一杯になった。
【第二部 2章 p98】

今までの印象で、ムルソーは何か悟ったような奴で諸々の欲が欠けているのかと思われたかもしれませんが、彼にもれっきとした性欲があります。

 

いや、というか割とムルソーの性欲はかなり強めです。

 

作中では、恋人のような関係のマリイという女性が度々登場するのですが、ムルソーはマリイに会うたび毎にしょっちゅう欲望を感じています。

 
愛してはいないが性欲は感じるという、ムルソーは女性にとっては害悪としか言いようのない存在です。
 
 

ムルソーの人物像を考察

さて、お次はいよいよムルソーの人物像の考察です。
 
前項で、ムルソーには「冷淡」「無関心」「億劫がり」「性欲旺盛」といった特徴があることを挙げました。
 
では、なぜこうした常人とは異なる特徴がムルソーから生まれるのか。
 
それは、ムルソーが"現在"の具体的な欲望を最重視していて、一方で"過去"に抱いてきた一連の感情を抽象化することに全く意味を見出していないからです。
 
こうしたムルソーの本質は本著中の解説でも語られていますが、下の図を見てもらえると分かりやすいかもしれません。

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上図のように、普通の人は、過去から現在にかけてを線という地続きとして捉えます。
 
例えば、過去に何回か遊んだことのある人のことを「友達」、幾度となく異性にときめいてしまうことを「愛」、と抽象化して統一的に認識しようとします。
 
しかし、ムルソーは、過去から現在へは“現在というかけがえのない一点”が積み重なっていると捉えます。そこに連続性はありません。
 
つまり、昨日までよく遊んでいたからといって今日もまた遊ぶとは限らないし、昨日散々S〇Xしたからといって今日もまたやりたいかなんて分からない。ただ、"今"、ヤりたかったらヤるし、食いたかったら食う。
 
そうした衝動性こそが、ムルソーの本質です。
 
 

カミュが『異邦人』で伝えたいメッセージとは

フランスの哲学者サルトルによると、『異邦人』は、
「不条理に関し、不条理にこうしてつくられた、古典的作品であり、秩序の作品」
であるみたいです。
 
ムルソーのように常人とは異なる感性を持つ人は異邦人と捉えられる。そうした扱いを"不条理"だとし、それに反抗するために作られた不条理サンプルがこの『異邦人』という訳です。
 
この『異邦人』の本質は、ムルソーの処刑を「無実の罪」によるものだと認めて初めて理解できるのかもしれません。(ムルソーの処刑=不条理)
 
私は、ムルソーの死刑はまあまあ妥当なんじゃないかと感じたんですけどねぇ…
 
 

番外編

いなくなったサラマノ老人の犬はムルソーが〇ったのか?

 
最後に、私が個人的に気になった部分を紹介します。
 
遠くの方から、私は、入口の閾のところにいる、何か興奮した様子のサラマノ老人に、気がついた。近づいて見ると、老人が犬を連れていないことがわかった
【第一部 4章 p50】
 
これです。
 
隣人のサラマノ老人の犬がこつ然と姿を消してしまう事件です。
 
これは、特に気にしなかった人が多いんですかねえ。
 
まあ、私も最初は思いっきりスルーしてましたよ。
 
でも、次のサラマノ老人の発言を見てビビッときました。
 
顔を伏せたまま、老人はこう私に尋ねた。「連中があいつをとり上げることはないだろう、ねえ、ムルソーさん。あいつを私に返してくれるね。さもないと、私はどうなるんだ?」
【第一部 4章 p52】

 

 

きな臭ええ…

 

犬がいなくなった犯人はムルソーなんじゃないかと。そういうニュアンスを持ったサラマノ老人の発言です。

 

これに対して、ムルソーは華麗にスルーしてましたけど、真実はどうなんだろうか。

 

ムルソーなら「うるせえクソ犬〇したったw」とか普通に言いそうだから怖い。

 
 
・・・という妄想でした。