未熟者の哲学語り

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暇を持て余した理系大学生が、自己受容するための持論を展開していく。最終的な目標は、自分のことを愛せるようになること。

【書評】『大論争!哲学バトル』 考え方の基礎を培ってくれる本

 先日、『大論争!哲学バトル』という本を読みました。

大論争! 哲学バトル

大論争! 哲学バトル

 

本書の著者は、代々木ゼミナールの倫理、政治・経済講師を務める畠山創さんです。

 

畠山さんは情熱的かつ明快な講義に定評があり、本書でも哲学者たちの難解な考えを分かりやすくまとめ、読者に徹底的に考えさせる内容に仕上げています。

 

また、この作品では、内容を手掛けた畠山創さんの他に、イラスト担当として岩元辰郎さんも関わっています。

 

岩元さんは『逆転裁判』のキャラクターデザインをしていた人として有名な方です。

 

本の表紙の絵を見ると分かるように、岩元さんの描くキャラクターからは他の人とは一味違った独特な魅力が感じられます。

 

キャラクターの内面性までも顔で表現してしまう岩元さんの絵は、多種多様な考えを持つ哲学者たちを描くのにぴったりだと感じました。

 

この岩元さんの絵の見やすさと、畠山さんの文章の分かりやすさがあって初めて、本書の「分かりやすい哲学」が成り立っていると思いました。

 

 

 

本書の概要

著者の畠山さんは「哲学とは『吟味』と『対話』という行為のこと」という考えを持っています。

 

つまり、知識を蓄えるだけでなく、それを使って吟味したり対話することが哲学には必要ということです。

 

あと、畠山さんは過去の偉大な哲学者たちの思想を学ぶことも重要だと言っています。

 

そして、この2つの要素を盛り込むために、本書の内容のコンセプトは「対話をしながら、偉大な哲学者の思想を学ぶ」というものになっています。

 

本書では、過去の37人の哲人たちを対話形式で議論させるというやり方で、このコンセプトを実現させています。

 

哲学に疎い一般の人たちでも興味をそそられるようなテーマを賢者たちが語るさまは本当に壮観です。

 

テーマは次の15個になっています。

 

  1. 格差はどこまで許されるのか?
  2. 殺人は絶対悪なのか?
  3. 少年法は厳罰化すべきか?
  4. 人間の本質は善なのか悪なのか?
  5. 戦争は絶対悪なのか?
  6. グローバリズムと愛国心、どっちが大事?
  7. 人類の歴史を動かすものは何なのか?
  8. 社会と自分、行動を決めているのはどちらか?
  9. 最高の快楽と幸福とは何か?
  10. 自由は本当に必要か?
  11. 人は「1+1=2」を生まれつき知っているのか?
  12. 天国のような別の世界はあるのか?
  13. 神はいるのか、いないのか?
  14. この世界に真理はあるのか?
  15. 何のために生きるのか?

 

テーマを見ただけでも、面白そうな臭いがぷんぷんしますよね。

 

こんな1行足らずの質問なのに、どれだけ考えても答えが出なさそうなものばかりです。

 

こういう一見不毛に思えるような疑問について徹底的に考えていくのが、哲学の本質というわけです。

 

この本の各項目を読んだ後は、自分の中に何かしらの答えが必ず生じるはずです。

 

本書の特徴

本書は、哲学的な対話の訓練をするのにとても適していて、文句なく良書と言っていいと思います。
 
ただ、しいて挙げるなら、登場する哲学者たちは、それぞれが異なる時代に生きていたという点が欠点になるかもしれません。
 
例えば、現在、私は「過去の哲学者たち」の考えについて、あーだこーだと思考を巡らせています。
 
それと同じように、その「過去の哲学者たち」も、それぞれの時代から見た「過去の哲学者たち」の考えについて勉強したことがあるはずです。
 
そうなってくると、後に生まれた方が先に生まれるよりも断然有利ですよね。
 
例えば、アリストテレスなんて出没年が(紀元前384~紀元前322)です。
 
「おっさん何言ってんの?原始人じゃないんだからさぁ…哲学なんてする前に、まず常識を勉強した方がいいんじゃない?www」
 
なんて若者から嘲笑されても文句は言えません。
 
哲学は現在の社会状態や過去に生まれた概念ありきで話を進めるわけで、それを知らないと、「専門家による討議の中に一人素人が紛れ込んじゃった」みたいになってしまいます。
 
これは、バトルする場においては大きな足かせになると思います。
 

逆の視点から考えると 

まぁ、欠点と言っても、見方を変えれば長所と見ることもできます。
 
たとえフェアな勝負にならなかったとしても、異なる時代の哲学者が戦うとどうなるのか?を見られるだけでも十分価値はありま すから。
 
要は心持ち次第ってことです。

 

読んだ感想

タイトルに大論争と書いてあるだけに、哲学者たちの白熱した議論をまず楽しむことができました。

 

そして次に、この本のすごいところでもある体験する哲学を肌で感じました。過去の哲学史を学べるのはもちろんのこと、実際に自分でどうやって考えていくのかの道筋がしっかりと示されているのです。

 

こうして文字を追っているうちに、自分の頭の中に漂っていた断片的な思想パーツが集まり、かたちを成していくのがまざまざと感じられました。

 

こうした感覚こそが、著者の畠山さんが重要と言っていた“対話(哲学)”により生まれるものなのだと思います。

 

これを一度知ってしまうと、たまには友と哲学的なことについて語り合う(対話する)のもいいかもしれない、などと思ってしまいます。

 

web版

以下のサイトから『大論争!哲学バトル』の内容を無料で読めるようです。

大論争!哲学バトル | ダ・ヴィンチニュース

ただし、15個のタイトルの中の最初の5個しか載っておらず、図や注釈も付いていないので、本書を買うかどうかのお試しとして見るのが良いかもしれません。

難しい内容の多い哲学系の本の場合は、やはり書き込みなどのできる紙媒体の本がおすすめになりますね。

大論争! 哲学バトル

大論争! 哲学バトル